屋根リフォームの手法として、近年急速に普及しているのが「カバー工法(重ね葺き)」です。既存の屋根を撤去せずに、その上から新しい屋根材を被せるこの工法は、多くのメリットを持つ一方で、採用する前に知っておくべき注意点も存在します。その両方を正しく理解することが、最適なリフォーム選択に繋がります。カバー工法の最大のメリットは、経済的な負担を軽減できることです。既存屋根の解体作業と、そこから発生する廃材の処分費用が不要なため、下地からやり直す「葺き替え」に比べて、総費用を大幅に抑えることができます。特に、アスベスト含有の可能性がある古いスレート屋根の場合、撤去費用が高額になるため、このコストメリットは非常に大きくなります。工期が短いことも魅力の一つです。解体作業がない分、工事全体の工程が少なくなり、天候にもよりますが、一週間から十日程度で完了することが多いです。工事中の騒音や粉塵の発生も比較的少なく、住みながらのリフォームでも施主や近隣への負担を軽減できます。また、屋根が二重構造になることで、断熱性や遮音性が向上するという嬉しい副産物もあります。夏場の二階の暑さが和らいだり、大雨の際の雨音が静かになったりと、室内環境の快適性アップが期待できます。しかし、この魅力的なカバー工法にも適用できないケースや注意点があります。最も重要なのは、既存の屋根の下地の状態です。もし、下地である野地板が雨漏りなどによって腐食したり、傷んだりしている場合、その上から新しい屋根を被せても根本的な解決にはなりません。問題を内部に抱え込んだままになり、将来的にさらに大規模な修繕が必要になる可能性があります。そのため、施工前には専門家による下地の状態の入念なチェックが不可欠です。また、屋根全体の重量が増加することも考慮しなければなりません。現在の建築基準法では問題になることは稀ですが、特に旧耐震基準で建てられた古い住宅の場合は、建物への負担が増すことで耐震性に影響を及ぼす可能性もゼロではありません。信頼できる業者と相談し、建物の構造的な安全性を確認することが重要です。カバー工法は多くの利点を持つ優れた工法ですが、万能ではありません。自宅の屋根の状態を正確に把握し、その特性を理解した上で採用を判断することが求められます。
屋根カバー工法のメリットと知っておくべき事