置き畳の魅力を語る際に必ず登場するのが素材の違いですが、実はこの素材選びこそが、後にデメリットとして顕在化する不満の根源となります。多くの人が「畳といえばい草」というイメージで天然素材を選びますが、近年の高気密・高断熱住宅において天然い草の置き畳を維持するのは至難の業です。天然い草は植物であるため、定期的な換気と日光による殺菌、そして適切な湿度の管理がなされないと、瞬く間に寿命を迎えます。特に、現代の住宅で多用されるスチームクリーナーや過度な水拭きは、い草の繊維を破壊し、腐敗の原因となるため絶対厳禁です。こうした扱いの難しさを避けるために、樹脂(プラスチック)や和紙を素材とした置き畳も人気ですが、これらにも特有のデメリットが存在します。樹脂製は耐久性が高く水にも強い反面、冬場はひんやりとして冷たく、天然素材のような心地よい調湿効果は期待できません。また、静電気が発生しやすく、埃やペットの毛が吸い寄せられるように付着するため、掃除の頻度がかえって増えることもあります。和紙製は色のバリエーションが豊富で変色しにくいのが特徴ですが、一度強い衝撃で凹んだり、鋭利なもので傷がついたりすると、い草のように繊維が馴染むことがなく、その傷跡がずっと目立ち続けます。また、どの素材を選んだとしても、置き畳には「縁(へり)」がないタイプが多いため、角の部分から摩耗してボロボロになりやすいという構造的な弱点があります。通常の畳であれば、傷んだ表を張り替える「表替え」ができますが、ほとんどの置き畳は使い捨てを前提とした構造になっており、一部が傷んだだけで一式を買い直さなければならないという、コストパフォーマンスの悪さが長期的なデメリットとして重くのしかかります。環境負荷の観点から見ても、短期間で廃棄されるプラスチック芯材の畳は、現代のサステナブルな価値観に逆行している面も否定できません。素材が持つ長所ばかりが強調されますが、その裏にある「劣化の仕方の違い」と「修復不能な性質」を理解せずに導入すると、数年後に大きな後悔をすることになります。