リフォームにおいて、キッチンの位置を変えずに床だけを一新する場合、どのような床材を選び、どのような施工方法をとるかが、完成後の生活の質を大きく左右します。キッチンは住まいの中でも最も床に負担がかかる場所であり、水、油、調味料の飛散に加え、重い調理器具を落とすといった物理的な衝撃も頻繁に発生します。キッチンを取り外さずに施工する場合、特にお勧めしたいのが、近年その性能が飛躍的に向上しているリフォーム専用の「フロアタイル」や「高機能ビニル床シート」です。これらの素材は、一般的なフローリング材に比べて厚みが三ミリ程度と非常に薄く、既存の床の上に重ねて貼っても段差がほとんど気になりません。そのため、キッチンの足元や扉の開閉に干渉しにくく、見切り材を使わずに美しく収めることが可能です。また、カッターで精密なカットができるため、キッチンの複雑な形状や配管の立ち上がり部分にも、まるで元からそこにあったかのようにぴったりと合わせることができます。さらに、最近のフロアタイルは本物の木材や天然石と見紛うほどのリアルな質感を持ちながら、耐水性や防汚性に極めて優れているため、キッチンの床としての実用性はフローリングを凌駕します。施工時の工夫としては、キッチンの最下部にある蹴込み板を一度取り外し、その奥数センチまで新しい床材を差し込んでから再度蹴込み板を取り付ける手法が有効です。これにより、一見するとキッチンを浮かせて床を全面に張ったかのような連続性を演出でき、隙間への汚れの蓄積も防ぐことができます。一方で、どうしても本物の木を使ったフローリングにこだわりたい場合は、木の伸縮を考慮した熟練の技が求められます。木材は湿度の変化で膨張と収縮を繰り返すため、キッチンとの間に適切な「逃げ」を作る必要がありますが、そこをどのように見切り材で隠すかが職人の腕の見せ所となります。最近では、リビング側は温かみのある無垢材、キッチン周りだけはお手入れのしやすい大理石調のタイルといった具合に、素材を敢えて切り替えるデザインも人気です。この手法であれば、キッチンの手前で素材が変わるため、キッチンを動かす必要がなく、かつ空間にメリハリをつけることができます。自分のライフスタイルや掃除の頻度、そして何よりキッチンへの愛着の度合いに合わせて、最適な素材と技術を組み合わせることが、賢いリフォームの秘訣です。
キッチンの配置を変えずに床を美しく張り替える素材と技術の選択